2019/10/14


LEA-MELISSA VEHLING. Kampf der Geographen. Steht die Erdkunde vor dem Aus? 25.09.2019 - Aktualisiert: 26.09.2019, 15:49 Uhr, https://www.faz.net/-gun-9rkfu

仮訳山本隆太

地理学者・地理教員(Geographen)たちの戦い

地理は消えるのか?

全世界で広まるFridays for Futureに象徴されるように,気候変動に対する関心は世界中で高まっている。ただ,学校教育はそうでもない。気候を学ぶ教科である地理の授業時間は減少する一方で,世の中の動向とは反対だ。

世界中を巻き込んだFridays for Futureのデモは,気候変動や都市化,移民といったテーマを巻き込みつつ就学児世代の地球に対する関心を高めた。しかし,学校教育でこれを扱うはずの地理はいま,授業時間数を減らしている。ドイツ地理教員学会(VDSG)は地理教育の復活を強く願っている。VDSG会長のカール・ヴァルター・ホフマンは,「国連の17の持続可能な開発目標で示されたような世界的課題が眼前にあるにもかかわらず,地理の授業が減らされるのは理解しがたい」。これからの未来に関わる重要なテーマは学校教育で扱われるべきである。政治家は持続可能性や地球温暖化,地方過疎化といったテーマを掲げる一方で,地理を追いやっている。

ヘッセン州の各党の公約を見てみると(2018年選挙),緑の党では80回,キリスト教民主同盟では24回ほど“持続可能な“というキーワードが登場する。しかし,連立政権を組んだ両党の連立協定によると,「政治」と「歴史」の2教科をギムナジウム上級段階(日本の高校進学レベル)の必修科目とし,かつ,社会科の中での重点領域を2/3に減らすことが書かれている。

これでは,上級段階の地理が開講されていて選択できたとしても,アビトゥーア(高校修了試験)に向けてはあまりにも時間が不足しているし,また,必修でもないからより目立たない科目になっていく。ホフマンによれば,アビトゥーアまで地理を履修する生徒は全体の6%にも満たないという。さらに,VDSGの調査によると,ヘッセン州内の各学校での地理の授業の2/3は,地理を専門としない教員によって行われているという。ヘッセン州文部大臣のシュテファン・レーヴァーは,「VDSGが危惧することは履修計画の作業に関することであろうし,そうしたことは考慮して作業を進めていく。」

その他の州でも似たような状況である。G9(ギムナジウム9年制)への転換は,G8の時代にカットされた地理の授業時間を補うための絶好の機会であると,ホフマンは述べる。しかし,例えばノルトラインヴェストファーレン州やバイエルン州では,G9への復帰が必ずしも地理の授業時間の復活とはなっておらず,地理はますます消え去ろうとしている。いつかは,ギムナジウムの地理教育が全滅する州も出てくることが懸念される。

学校教育政策の連邦制度により,それぞれの州でカリキュラムや状況が異なっていることから,ロビー活動は極めて困難である。また,連邦制度は生徒の教育スタンダードにも大きな影響を与えている。そのため,VDSGは,どの生徒も抑えておかなければならない基礎的なコンピテンシーを示した基礎カリキュラム(Basiscurriculum)を要求している。「生徒たちの生活世界はグローバル化が進み,地理の授業で初めてそのことがよく理解できる。そのため,ドイツ連邦として全州的な地理教育の要求水準を示す必要があるが,その一方で,地域の実情に合わせてカリキュラム・マネジメントの余地を残す必要もまたある。」とホフマン。

ちなみに,VDSGはすでに独自の教育スタンダードの作成しており,全州文部大臣会議においてもその存在は認知されているものの,他教科のように認定化されるあるいは義務化されるという段階には至っていない。またこれ以外で地理が政策上,耳目を集めることもない。20196月上旬には国会の公党に公開書簡を送ったが,CSUSPDから回答があったのみでしかもその回答は冷淡なものであった。

VDSGは地理の授業数の確保に尽力するべく,ロードマップ2030の作成に取り組んでいる。2021年までに行動計画を策定する。地理教員たちが一般社会の地理的な内容に対する関心や感度を向上させることや,教員養成を向上させること,地理教育のカリキュラムを最新のものに改訂することといった戦略をとることで,2030年までには,学校での地理の扱いが高まった状況にするのが狙いである。毎年開催されるドイツ地理学会(DKG)では会員による情報や意見の交換に努める。「地球上に存在するありとあらゆる衝突や紛争は地理的な原因があり,地理は,21世紀のコア科目である」とホフマン。