・高校で両方履修したらわかるが、内容的にも重なるところが多い(具体的にはプレートテクトニクスや地震、扇状地や三角州といった地形、偏西風や高圧帯といった大気の大循環など)
・日本では文系と理系にわかれているこの2科目は、ドイツなどのヨーロッパの国では、Geographyとして一つの科目として一緒にされているケースが多い。
・いまは2教科がバラバラに教えられているが、防災学習や環境教育、ESDといった教育的な目的のために、連携しあいながら勉強した方が、学ぶ側にとっては「深く学べる」のではないか。
・そんなことを思ったので、地理にも地学にも登場する「フォッサマグナ」をテーマとして、地学と地理とで授業を考え、実践した(地学×地理という科目名の並びは、地球科学の理論的展開をより積極的にベースとして採用した、という意味をこめ、最初に地学を置いた。もし、身近な現象とか経験的な内容を重視するのであれば、地理×地学としたかもしれない。でも、今回の実践の結果、経験的な内容を重視して学習を構想するよりも、理論的な背景を基礎にして学習を構想したほうが学習の流れやカリキュラムという点で整合性が取れると感じたので、地学を先にあげている)。
・実践の結果、フォッサマグナを2つの教科で学ぶことに意義を感じる生徒がほとんどだった(96%, n=51)。二つの教科は、二つの視点を提供し、物事を多面的に理解できるようになる、という指摘も興味深い。授業をする先生にとってもお互いにメリットがみられた。たとえば、地学での科学的な説明をしている最中に、地震の被害について触れることは従来から可能だったが、ややトリビア的な、知っておくとへぇーというような感触がぬぐえなかった(自然科学の内容を展開している最中に、関連あるからといって社会科学の話をすれば違和感を感じるのは当然)。しかし、地理と積極的に連携することで、防災についてはすぐその後の地理の授業で、社会科学として展開してもらえることがわかっているので、地学は自然科学に専念できる。地理の先生としては、自然地理的なメカニズムやプロセスについては資料的にも時間的にも十分に説明できなかったが、地学の先生が説明してくれることで、社会科的な内容に集中することができる。
http://www2.jpgu.org/meeting/2015/session/PDF/G-04/G04-P03.pdf
(地理はGeography、地学はGeology。
かつて高校生の頃、地理、「地面の理(ことわり)を学ぶものだ」と思っていた。でも、それだったら、Geo-logyの方が理に近い。logyは論理といった意味だから。それに、Geoには大地という狭い意味だけでなく、地球という意味がある。なんだ、Geologyこそ、地球の理を探究する領域じゃないか。
じゃあ地理はといえば、Geo-graphy、ジオ・グラフィ。「グラフ」は線グラフとか棒グラフのように、数字の積み重なりや動きを、見えるように「描いた」もの。つまり地理は、地球を描くという意味になる。もう少しカッコつければ、見えないものも含めた色々な出来事を可視化して描出することになる。
じゃあ、地理は「描く」だけで、「理論」はないのか、といえばそうではない。)
地球温暖化や砂漠化などの環境問題に加え、2011 年の東日本大震災といった大災害を経験した日本では、地球および自然環境についての学習の重要性は益々高まっているといえる。これらの諸問題に対しては持続可能な解決策を考えなければならない。しかし、人間社会の貧困や開発といった社会経済的側面を視野に入れない解決策では、持続可能な地球は実現されえない。場合によっては、ある科学的解決策が次なる社会問題を生む恐れさえある。こうした地球規模での環境問題・開発問題に対しては、地球 (GEO) という視点から諸課題を全体的・包括的に捉える視点が必要とされており、この点を議論しているのが Future Earth であるといえる。学校教育に目を移すと、地球にまつわる学習は地学教育・地理教育で行われている。双方の学習を通じて自然環境と社会経済問題を包括的に扱うことはできるのであろうか。
かねてから地理 (自然地理) と地学 (固体地球・大気・海洋) には共通する内容が多いことは知られている。しかし、この共通点について、実際に授業実践を通じて検討した報告は管見の限りない。そこで本研究では、内容の共通性に着目し、地理・地学による授業実践を行うとともに、その可能性について検討した。都内私立高校の 2 年生文系地理 B 履修者 (54 人) を対象とし、1 単位時間 (45 分) の授業で、地学的視点と地理的視点からフォッサマグナを扱う授業実践を試みた。授業後には生徒から授業アンケートを回収した。
授業実践は、地球や地球的タイムスケールといった地学的視点について確認をした上で、日本列島の形成を扱い、糸静線の位置や堆積層が 6000m 以上あるといったフォッサマグナの地学的側面を確認した。続いて、自然と人文の関係を総合的に扱う地誌といった地理的観点について確認をした上で、フォッサマグナと人間生活の関わりについて、ジオパークによる観光や、糸魚川のセメント産業について確認した。
授業後に行ったアンケート結果では、51 名 (96 %) が「地理・地学の「捉え方の違い」を理解できた」、「2 つの視点から学ぶことは有意義であると感じる」と答えた。また、違う視点から同じ事象を見ることで理解が深まるといったコメントが寄せられた。その他、地学が実社会と関わる部分を地理学習が担うことによって、地学学習の意義が意識されるようになるという地学にとっての利点や、自然地理的内容の科学的プロセスやメカニズムの説明を曖昧にせずに授業が展開できるといった地理にとっての利点があると考えられる。
実践から導かれた今後の課題は、1) 教材形式・学習作業工程の洗練をはかり、学習作業を通じて学問観の違いを意識化させる方法の開発、2) 地学・地理の学習体系全体における共通授業可能性の検討、の 2 点が指摘される。