2012/07/13

教員養成スタンダード


山本隆太 2011. 教員養成スタンダードと学会版教員養成ガイドラインからみた現代ドイツにおける地理教員像. 早稲田大学教育・総合科学学術院学術研究人文科学・社会科学編60, 255-266.




ドイツにおける教員養成スタンダードシリーズの完結と、それに続いて出されたドイツ地理学会による地理教員養成ガイドラインの二つによって、ドイツ地理学界が目指す地理教員の在り方が示された。そこでは、「第三の柱」の議論とも一部重なっていると思われるが、「人間―環境システム」がキーとなり、既存の自然地理や人文地理、理論やフィールドワーク、地域地理学の学修をまとめていく、「一体としての地理学」観がにじみ出ている。各科学的領域の発展のスピードに対して、それらをつなぎとめておく方法が定まらない中、地理教育というアクターによって地理学の統一体系を保とうとしているともいえる。

ドイツの地理教員理想像は、持続可能な社会を担う人財そのものである。持続可能な社会に対して課題志向性を持ち、批判的思考やシステム思考を身に着け、地理学的な科学手法による分析と総合が行え、代替案提示と積極的な社会参画までできる人財が、教育科学や教育心理学などの知見を用いて子どもに持続可能な社会の作り方を伝えていくことを、つまり、「持続可能な社会の作り方を伝える教育」こそがESDであるといっている。

あとドイツ的で面白いと思ったのは、「地球的変動期はチャンスである」という言葉。さまざまな分野の国際スタンダードを狙い続けているドイツらしい発想で、DAADが「熱帯農作物の育成技術開発」に注力している様子が目に浮かんだ。ドイツ本国には全く必要のない熱帯地方用の技術開発に投資しているのが、学術交流会という奨学金団体なのだから、ドイツの「奨学金」や「交流」の考え方は非常に奥深い。翻って日本は、国費留学生が日本で生活する際の消費行動の地域への経済効果を計算している。「これだけ多くのお金が、地域に落ちました!」といわれると、「なるほど!」としか言えない。・・・と、話はスライド&フェードアウト。